記事監修者

弁護士 須賀 翔紀

須賀法律事務所

東京弁護士会

刑事事件に精通した弁護士として、多数の刑事弁護案件を担当。被疑者・被告人の権利擁護と適正な刑事手続の実現に尽力しています。

逮捕直後からの迅速な対応、示談交渉、裁判での弁護活動まで、刑事事件のあらゆる段階で依頼者をサポートします。

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公開日:2026年1月13日
更新日:2026年1月13日
読了時間:約16分

児童買春で逮捕された…18歳未満と知らなかった場合の弁護方法

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児童買春の容疑で逮捕され、その事実を突きつけられた時、「相手が18歳未満とは知らなかった」という思いは、深い絶望と混乱をもたらすでしょう。予期せぬ逮捕は、個人の生活だけでなく、家族や社会的な立場にも甚大な影響を及ぼします。本記事では、このような極めて困難な状況に直面した方々、あるいはそのご家族に向けて、児童買春事件における「年齢の錯誤」という法的論点に焦点を当て、その法的側面、弁護の可能性、そして取るべき具体的な行動について、専門的な視点から詳細に解説します。不安を抱える皆様が、適切な弁護戦略を立て、最善の結果を目指すための指針となることを願っています。

問題提起:予期せぬ逮捕と「知らなかった」という現実

児童買春の容疑で突然逮捕されるという事態は、多くの人にとって想像を絶する衝撃であり、その後の人生を大きく左右する可能性があります。特に、「相手が18歳未満であるとは全く知らなかった」という状況で逮捕された場合、被疑者は自身の認識と法的な現実との乖離に苦しむことになります。しかし、刑事司法の現場では、単に「知らなかった」という主張が容易に受け入れられるわけではありません。児童買春は、その性質上、社会的な非難が強く、捜査機関も厳格な姿勢で臨むため、被疑者の「知らなかった」という弁明は、往々にして「言い逃れ」と見なされがちです。この問題の根底には、犯罪の成立要件としての「故意」の解釈があり、特に「未必の故意」という概念が深く関わってきます。本章では、この「知らなかった」という主張がなぜ困難を伴うのか、そして故意の有無がどのように刑事事件の厳しさを決定づけるのかについて掘り下げていきます。

法的解説:児童買春の成立要件と「故意」の解釈

児童買春の定義と法律

児童買春は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下、「児童買春処罰法」)によって厳しく規制されています。この法律において「児童」とは、18歳に満たない者を指します。そして、「児童買春」とは、児童に対し、金銭その他の対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し性交等(性交若しくは性交類似行為をし、または自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等に触れる行為)をすることを指します。児童買春を行った者には、5年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い法定刑が科せられます。

故意犯の原則と「未必の故意」

日本の刑法においては、犯罪が成立するためには、客観的な犯罪事実が存在することに加え、行為者がその客観的な犯罪事実を認識していること、すなわち「故意」が必要であるという原則があります(刑法38条)。この「故意」には、大きく分けて「確定的故意」と「未必の故意」の二種類が存在します。確定的故意とは、行為者が犯罪事実の発生を確信的に認識している場合を指します。例えば、相手が18歳未満であることを明確に認識した上で買春行為に及ぶケースがこれに該当します。一方、未必の故意とは、行為者が犯罪事実の発生を確定的に認識しているわけではないものの、その発生を予見し、それでも構わないと認容して行為に及んだ場合を指します。児童買春のケースで言えば、「相手が18歳未満かもしれない」という認識があったにもかかわらず、その可能性を容認して買春行為に及んだ場合、未必の故意が認められ、児童買春の罪が成立する可能性があります。捜査機関は、この「未必の故意」の存在を厳しく追及することが多く、「知らなかった」という主張だけでは不十分とされる背景には、この未必の故意の解釈が大きく影響しています。

年齢の錯誤と弁護の可能性

被疑者が真に相手を18歳以上であると信じていた場合、児童買春の故意は欠如していることになり、犯罪は成立しないはずです。しかし、捜査機関は、被疑者の「知らなかった」という主張を容易には信用しません。取調べにおいては、「18歳未満かもしれないと頭をよぎったのではないか」「容姿から18歳未満であると分かるはずだ」「年齢を確認しなかったのはなぜか」といった誘導的な質問がなされることがあります。

例えば、出会い系アプリの年齢確認を信頼していた、あるいは相手の容姿や言動から成人であると判断した、といった主張はよく聞かれます。しかし、アプリの年齢確認は偽装が可能であること、また容姿や化粧、服装などから正確な年齢を判断することは困難である、といった理由から、これらの主張が捜査機関に受け入れられないケースも少なくありません。弁護活動においては、この「年齢の錯誤」が真実であったことを客観的な証拠に基づいて立証し、故意の欠如を主張することが極めて重要となります。

関連する他の犯罪

児童買春が成立しない場合であっても、他の犯罪が成立する可能性も考慮しなければなりません。例えば、16歳未満の児童に対して、威迫、偽計、誘惑、または拒否されたにもかかわらず反復して面会を要求したり、利益を供与したりする行為は、「面会要求等の罪」として処罰の対象となります。わいせつ目的で実際に会った場合は、さらに重い刑罰が科せられます。また、各都道府県が定める「青少年健全育成条例」に違反する行為や、状況によっては「未成年者誘拐罪」が成立する可能性も存在します。これらの関連犯罪についても、弁護活動においては十分に検討し、適切な対応を取る必要があります。

具体的な事例:年齢錯誤が争点となったケーススタディ

事例1:出会い系アプリでの年齢詐称

あるケースでは、被疑者が出会い系アプリを通じて知り合った相手と性交等に及びましたが、後に相手が18歳未満であることが判明し、児童買春の容疑で逮捕されました。被疑者は、アプリのプロフィールには「20歳」と記載されており、アプリの年齢確認も通過していたため、相手が成人であると信じていました。弁護側は、被疑者がアプリのシステムを信頼しており、相手の年齢について真に錯誤があったことを主張しました。具体的には、アプリの利用履歴、メッセージのやり取り、相手のプロフィール情報などを証拠として提出し、被疑者に未必の故意すら存在しなかったことを立証しようとしました。この事例では、アプリの年齢確認システムの信頼性や、相手が年齢を詐称していた経緯などが重要な争点となりました。

事例2:容姿からの判断ミス

別の事例では、被疑者が街中で知り合った相手の容姿や言動から成人であると判断し、性交等に及びました。しかし、実際には相手は18歳未満であり、後日児童買春の容疑で逮捕されました。被疑者は、相手が派手な服装をしており、化粧も濃く、言動も大人びていたため、まさか未成年であるとは思わなかったと主張しました。弁護側は、被疑者の主観的な認識が客観的な状況に照らして不自然ではないことを立証するため、当時の相手の服装や化粧、会話の内容、周囲の状況などを詳細に調査しました。また、被疑者が過去に未成年者との接触を避けていた事実なども提示し、故意の欠如を訴えました。このケースでは、被疑者の認識が合理的であったかどうかが焦点となりました。

事例3:不起訴処分を獲得したケース

児童買春の容疑で逮捕されたものの、弁護活動によって不起訴処分を獲得した事例も存在します。例えば、被疑者が相手の年齢について真に錯誤しており、その錯誤が客観的な状況から見て不自然ではないと判断された場合です。弁護士は、被疑者の供述の信用性を高めるための証拠収集(例えば、通信記録、目撃証言、被疑者の普段の行動様式など)を行うとともに、被害者側との示談交渉を積極的に進めました。示談が成立し、被害者側が処罰を望まない意思表示をしたことは、検察官が起訴・不起訴を判断する上で非常に重要な要素となります。このようなケースでは、早期に弁護士に相談し、適切な弁護活動を行うことが、不起訴処分獲得の鍵となります。

弁護活動のポイント:無実を証明し、早期解決を目指す

逮捕直後の対応

児童買春の容疑で逮捕された場合、最も重要なのは、黙秘権を行使し、直ちに弁護士に相談することです。逮捕直後の取調べは、被疑者にとって精神的に大きな負担となり、不適切な供述をしてしまうリスクが高まります。警察官は、被疑者の自白を引き出すために様々な質問をしますが、安易に供述すると、それが不利な証拠として利用される可能性があります。弁護士は、取調べに立ち会い、被疑者の権利を守り、適切なアドバイスを提供することができます。また、供述調書の作成時には、内容を十分に確認し、事実と異なる点があれば訂正を求めることが重要です。

「故意の欠如」を立証するための弁護戦略

「18歳未満と知らなかった」という主張を裏付けるためには、単なる弁明ではなく、客観的な証拠に基づいた弁護戦略が必要です。弁護士は、以下の点に注力して「故意の欠如」を立証します。

客観的証拠の収集: 通信記録(メッセージアプリのやり取り、通話履歴)、SNSの投稿内容、目撃証言、防犯カメラの映像など、被疑者が相手の年齢を誤認していたことを示す証拠を幅広く収集します。特に、相手が年齢を詐称していたことを示す証拠は、弁護にとって極めて有利に働きます。 被害者側の年齢詐称の可能性の検討: 被害者が自ら年齢を偽っていた、あるいは成人であるかのように振る舞っていた事実があれば、それを積極的に主張します。出会い系アプリのプロフィールや、会話中の言動などがこれに該当します。 供述の信用性を高めるための弁護士の役割: 弁護士は、被疑者の供述が真実であることを裏付けるための証拠を提示し、その信用性を高めるための弁護活動を行います。また、取調べにおける不当な誘導や強要があった場合には、それを指摘し、供述調書の任意性・信用性を争うこともあります。

示談交渉の重要性

児童買春事件において、被害者との示談交渉は、不起訴処分や減刑を獲得するために極めて重要な要素となります。示談が成立し、被害者側が被疑者の処罰を望まない意思表示をした場合、検察官は起訴を躊躇する傾向にあります。示談交渉は、被害者の感情に配慮しつつ、適切な賠償を行う必要があり、専門的な知識と経験を持つ弁護士が介入することで、円滑に進めることができます。弁護士は、被害者との間に立ち、冷静かつ誠実に交渉を進め、被疑者にとって最善の結果を目指します。

その他の弁護活動

勾留阻止、保釈請求: 逮捕後、勾留が決定されると身体拘束が長期化し、社会生活への影響が大きくなります。弁護士は、勾留の必要性がないことを主張し、勾留阻止のための活動を行います。また、勾留が決定された場合でも、保釈請求を行い、早期の身体解放を目指します。 意見書の提出: 弁護士は、事件の経緯、被疑者の反省の態度、家族のサポート体制などをまとめた意見書を検察官や裁判所に提出し、被疑者に有利な情状を主張します。 公判での弁護活動: 起訴された場合、弁護士は公判において、証拠の吟味、証人尋問、最終弁論などを通じて、被疑者の無罪を主張したり、情状酌量を求めたりする弁護活動を行います。

よくある質問と回答(FAQ)

Q1: 相手が18歳未満と知らなかった場合でも、逮捕されますか? A1: はい、逮捕される可能性は十分にあります。警察は、まず客観的な事実(相手が18歳未満であること、性交等があったこと)に基づいて捜査を進めます。逮捕は、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に行われるため、「知らなかった」という被疑者の主張が直ちに逮捕を回避する理由にはなりません。逮捕後、取調べを通じて故意の有無が慎重に判断されることになります。

Q2: 警察の取調べで「知らなかった」と主張しても信じてもらえません。どうすれば良いですか? A2: 警察の取調べでは、被疑者の供述が矛盾していないか、客観的な証拠と整合性が取れているかなどが厳しく問われます。単に「知らなかった」と繰り返すだけでは、捜査機関に信用されない可能性が高いです。このような状況では、黙秘権を行使し、直ちに弁護士に相談することが最も重要です。弁護士は、被疑者の状況を正確に把握し、適切な供述の仕方や、故意の欠如を裏付けるための証拠収集についてアドバイスします。

Q3: 示談交渉はどのように進められますか?

A3: 示談交渉は、通常、弁護士が被害者側(またはその代理人弁護士)と連絡を取り、進めます。被疑者自身が直接被害者と交渉することは、感情的な対立を招いたり、二次被害とみなされたりするリスクがあるため避けるべきです。弁護士は、被害者の意向を確認し、謝罪の意思を伝え、適切な示談金の提示や、再発防止策の約束などを行います。示談が成立すれば、その内容を記した示談書を作成し、検察官に提出します。

Q4: 弁護士費用はどのくらいかかりますか?

A4: 弁護士費用は、事件の複雑さ、弁護活動の期間、弁護士事務所の料金体系などによって大きく異なります。一般的には、着手金、報酬金、実費などがかかります。多くの弁護士事務所では、初回無料相談を実施しているため、まずは相談して具体的な費用見積もりを確認することをおすすめします。費用に関する不安がある場合は、遠慮なく弁護士に相談し、納得のいく説明を受けることが重要です。

Q5: 前科をつけずに解決することは可能ですか?

A5: はい、適切な弁護活動を行うことで、前科をつけずに解決できる可能性は十分にあります。不起訴処分を獲得できれば、前科はつきません。また、起訴された場合でも、執行猶予付き判決や罰金刑にとどまることで、実刑を回避し、社会生活への影響を最小限に抑えることができます。特に「18歳未満と知らなかった」という年齢の錯誤が認められれば、故意が否定され、不起訴処分となる可能性が高まります。早期に弁護士に相談し、最善の弁護戦略を立てることが重要です。

まとめ

児童買春の容疑で逮捕され、「相手が18歳未満と知らなかった」という状況に直面することは、計り知れない不安と困難を伴います。しかし、このような状況においても、適切な法的知識と専門的な弁護活動によって、事態を好転させる可能性は十分に存在します。本記事では、児童買春の法的定義から「故意」の解釈、特に「未必の故意」の重要性、そして年齢の錯誤が争点となる具体的な事例、さらには無実を証明し早期解決を目指すための弁護活動のポイントまでを詳細に解説しました。逮捕直後の対応、客観的証拠の収集、示談交渉の進め方など、弁護士の役割は多岐にわたります。不安や疑問を抱えたまま一人で悩まず、刑事弁護に精通した弁護士に速やかに相談し、専門的なサポートを受けることが、あなた自身とご家族の未来を守るための第一歩となります。適切な弁護戦略を立て、最善の結果を目指しましょう。

記事監修者

弁護士 須賀 翔紀

須賀法律事務所

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刑事事件に精通した弁護士として、多数の刑事弁護案件を担当。被疑者・被告人の権利擁護と適正な刑事手続の実現に尽力しています。

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